基礎整備の現状と将来
公共事業とは公益のために行う事業であり、行政府が社会資本の整備を目的として実施する事業であるが、基盤整備が進むにつれ恩恵を当然のことと思うようになる。発注者は社会基盤整備の役割を積極的に発信すべきである。構造物維持管理の現状は事後保全型であるが、予防保全型に転換して LCC の低減を図る必要がある。また、落札率の低下や予定価格の低下が落札価格の低下を招いており、品質の低下につながっているので、発注者における、イニシャルコストから LCC 重視への転換など積算システムの改善、不良業者の排除、企業における適正利潤の確保が望まれる。
発注者は、公共事業の効用について情報発信するとともに品質の良否を見抜く力と優れた注文書を作る能力が求められており、納税者の立場からマネジメントする能力や専門技術者としての判断力を養わねばならない。建設業は建設活動を通じ社会の要請に応え、雇用を創出し、適正利潤を得ることにより納税義務を果たすものである。技術者としての倫理観と誇りを持ち、発注者とのパートナーシップ(連帯と役割分担)を強化しながら技術の熟練化の推進が望まれる。
九州大学名誉教授 松下 博通 氏